Poggenpohl Tokyo +STORIES Retreat House
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アートのある住まいのリトリート・キッチン

日本の長野県は森が多いエリアとして知られます。緑あふれる土地に医師として働くオーナー夫妻が建てたのは、別荘のような趣を持つモダンな一軒家です。建築事務所の紹介で、ポーゲンポールを知った夫人は、堅牢で誠実なこのドイツキッチンに決めました。

 仕事で多忙な夫妻に建築家がプランしたのは気持ちを切り替えられる静謐な非現実の空間-「リトリート」できる住まいでした。広いリビングやダイニング、テラスがあり、週末のおもてなしにも十分な機能を備えていますが、基本は日々の暮らしを穏やかに静かに過ごすための場所です。家のあちこちにはアートが飾られ、端正な住まいの景色の中に、キッチンの一部やワインセラーがちらりと見えます。

 同じサイズの扉を並べた整然としたデザインは、直線的な意匠を得意とする建築家のプランと融合しています。窓側の料理用のキッチンは深い輝きを持つ「ポーラーホワイト」の扉、壁側の収納中心のユニットはダークな「パインテラデコールプリント」。キッチンの収納は内引き出しにし、表から扉はすっきりと見えます。中は深い引き出しと浅い引き出しを組み合わせて、使いやすく。オーナー夫人は道具や器は間を空けて収めて、余白を残しています。ぎゅうぎゅうにものを詰めるということはしません。器や道具にもアートを扱うような、丁寧な気持ちで向き合っていることの表れでしょう。

 シンクは特注の大きなダブルボウルです。メインは幅73センチ、サブは35センチ。 深さは26センチ。 食器洗い機はつけませんでしたが、サブシンクにはメッシュカゴをかけ、洗い物の水切りができるようになっています。良い器や道具は手で丁寧に洗ってお手入れしたい。そんな奥様の想いが垣間見えます。ガスコンロは4口のハイカロリーバーナー、コンパクトな電気オーブン、水素水の水栓、ワインセラー付きの大型冷蔵庫など、美味しさを引き出す設備機器はしっかりと備え、美食と健康を支えるキッチンにもなっています。

 そしてアートはこの家の大事なポイントですが、印象に残るのが日本を感じさせる作品。リビングの飾り棚に有田の柿右衛門の器、玄関に日本画の桜。オーナー夫妻が、円熟した時間を静かに楽しみます。そんなアートのある暮らしと寄り添うのがポーゲンポールのキッチンなのです。

(文:キッチンジャーナリスト本間美紀)